通知を設計し直す

TL;DR
- 通知は「初期設定のまま全部オン」が、いちばん集中を削る状態になりやすい。
- すべて切るより、本当に割り込んでよいものだけを残す設計が現実的。
- 通知の見直しは、緊急の定義を決めることとほぼ同じ作業になる。
- 中断からの復帰には時間がかかるため、回数そのものを減らす意味は大きい。
この記事は、通知に悩む二人の作り手の会話をもとに構成した。一人はすべての通知をオフにしている人(以下、A)、もう一人は通知を一つずつ見直してきた人(以下、B)だ。
A「私はもう全部オフにしました。鳴るたびに気が散るので。」
B「気持ちは分かります。ただ、全部オフだと、今度は『見逃していないか』が不安になりませんか。確認のために自分から何度もアプリを開く。結局、割り込みの回数は減っていない、なんてことが起きがちです。」
A「たしかに、こまめに開いて確認しています。」
切るより「選ぶ」
B「私は全部オフではなく、割り込んでよいものだけを残しました。サービスの障害を知らせる通知や、本当に急ぎの連絡経路だけはオン。それ以外は、後でまとめて確認する。こうすると、鳴ったら『本当に対応すべきこと』だと信頼できるので、逆に確認しに行く回数が減りました。」
A「鳴る=対応すべき、という信頼を作るわけですね。」
B「そうです。通知を全部残すと、その信頼が壊れる。十回中九回が広告やどうでもいい更新だと、結局すべてを疑って確認することになる。「いつでも対応」とどう距離を取るかでも出てきた話ですが、何を緊急とみなすかを決める作業と、通知を選ぶ作業は、ほとんど同じなんです。」
中断のコストを見くびらない
A「でも、通知ひとつで数秒見るだけなら、大した中断じゃない気もします。」
B「そこが見落とされがちなところで。見るのは数秒でも、元の作業に集中が戻るまでには、それよりずっと長い時間がかかります。カリフォルニア大学アーバイン校のグロリア・マークらの研究では、いったん中断された作業に再び没頭するまでに相当の時間を要することが示されています。数秒の通知が、実際には十分単位の損失になりうる。」
A「回数を減らすこと自体に意味がある、と。」
B「ええ。一回あたりの中断は小さく見えても、回数が積もると一日の集中はほどけてしまう。だから私は、通知の音と表示を弱めるだけでなく、そもそも鳴る回数を減らすことを優先しています。」
定期的に棚卸しする
B「もう一つ大事なのは、通知設定を一度決めて終わりにしないことです。新しいアプリを入れるたびに、初期設定の通知がこっそり増える。だから時々、設定画面を開いて『これは本当に割り込んでいいか』を見直します。」
A「月末の静かな見直しのついでにやれそうですね。」
B「まさに。通知は放っておくと増える方向にしか動かない。だから定期的に引き算する。全部オフにして不安になるのでも、全部オンにして消耗するのでもなく、信頼できる少数だけを残す。地味ですが、これがいちばん長続きしました。」
二人の結論は、極端なオン・オフのどちらでもなかった。鳴ったら信頼できる、という状態を保つこと。それは集中を守る話であると同時に、自分が何を大事にしているかを通知の設定に映す作業でもある。集中の時間そのものをどう確保するかは、集中の時間をブロックで守るへ続く。
出典
- Gloria Mark ら(カリフォルニア大学アーバイン校)作業の中断と再集中に関する研究
- 各 OS(iOS/Android/Windows/macOS)通知設定・集中モードの公式ドキュメント