月末の静かな見直し

TL;DR
- 月次の見直しは、時間を測って短く区切ると、負担にならず続けられる。
- 増やしたものより「もう要らないもの」を探すと、運用が肥大しにくい。
- 見直しは判断の場であって、その場で全部を直そうとしないほうがよい。
- 記録を一か所に残すと、翌月の見直しが前月の続きから始められる。
月末の金曜、夕方5時すぎ。あるフリーランスのデザイナーが、月に一度の「見直し」を始めるところに立ち会わせてもらった。彼の机にはタイマーが一つ。「30分だけ」と彼は言って、それをスタートさせた。「長くやると、かえって続かないので」。
時間を区切るから続く
彼の見直しは、決して大がかりではなかった。前の月に使ったツールの一覧を眺め、契約の更新日を確認し、止まっている自動化がないかをざっと見る。それだけだ。「全部を完璧に点検しようとすると、腰が重くて先延ばしになる。だから30分で終わる範囲だけ」。
この割り切りは理にかなっている。集中の時間をブロックで守るで書いたように、短い区切りは始めるハードルを下げる。月次の見直しも同じで、所要時間が読めるほど、習慣として根づきやすい。タイマーが鳴ったら、途中でも一度切り上げる。続きは翌月でいい、という構えだ。
「もう要らないもの」を探す
見ていて印象的だったのは、彼が「足りないもの」より「もう要らないもの」を探していたことだ。半年前に契約したきり一度も開いていないサービス。重複している二つのツール。使わなくなった通知。「放っておくと、運用って勝手に太っていくんですよ」と彼は言った。ひとり運用の道具立てを最小にするでも触れたとおり、引き算の視点を定期的に入れないと、道具立ては膨らむ一方になる。
彼はその場で、使っていないサービスの一つを解約候補としてメモした。「ただし、今は解約しない。来月もう一度見て、それでも要らなければやめる」。即断せず、一度寝かせる。月次の見直しがあるから、こうした猶予を持てる。
その場で全部を直さない
30分のあいだ、彼は気づいたことを次々メモしていったが、その場で手を動かして直すことはほとんどしなかった。「見直しは、判断する時間。直す作業は別の日にやる」。両方を一度にやろうとすると、一つの修正にはまり込んで、点検そのものが終わらなくなるという。
これは運用ドキュメントの考え方にも通じる。情報処理推進機構(IPA)の資料でも、点検と是正は分けて回すことが運用の安定につながるとされる。見直しの時間に見つけた課題は、手順書や課題リストに書き出しておき、別途まとまった時間で対処する。ひとり運用を支える「手順書」のつくり方で触れた、使うたびに直す習慣ともつながってくる。
翌月の続きから始める
タイマーが鳴ると、彼はメモを一つのノートにまとめ、日付を入れて閉じた。「これを残しておくと、来月この続きから始められる。先月の自分からの引き継ぎですね」。記録が一か所にあるから、毎月ゼロから思い出さずに済む。
30分の見直しは、派手な成果を生むわけではない。けれど、運用が静かに肥大していくのを月に一度せき止め、判断を一か所に積み上げていく。彼が続けていたのは、増やす作業ではなく、太りすぎないように手入れする習慣だった。机のタイマーが0を指したとき、彼のノートには翌月への短い申し送りが一行だけ書かれていた。静かな運用は、こうした地味な月末の30分に支えられているのかもしれない。
出典
- 情報処理推進機構(IPA)運用・保守における点検と是正に関する公表資料
- David Allen『Getting Things Done』(定期的な見直し=レビューの考え方、邦訳『ストレスフリーの整理術』)